よく眠れたか

『槌持つてるもの、大黒樣だべアすか。』『此方ア?』『惠比須だす。』『すたら、これア何だす?』『布袋樣《ほていさま》す、腹ア出てるもの。あれ、忠太|老爺《おやぢ》に似たぜ。』と言ふや、二人は其忠太の恐ろしく肥つた腹を思出して、口に袂をあてた儘、暫しは子供の如く笑ひ續けてゐた。 階下《した》で...

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東京の家は地震でも搖れたら危い

『さあ、何方《どつら》だたべす。』『何方だたべな。』『困つたなア。』『困つたなす。』と、二人は暫時《しばらく》、呆然《ぼんやり》立つて目を見合せてゐたが、『表なやうだつけな。』とお八重。『表だつたべすか。』『そだつけ。』『そだたべすか。』 軈て二人は蒲團を疊んで、室の隅に積み重ねたが...

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枕邊の障子が白み初めた許りの時

[#6字下げ]八[#「八」は中見出し]

 翌朝は、枕邊の障子が白み初めた許りの時に、お定が先づ目を覺ました。嗚呼東京に來たのだつけと思ふと、昨晩《ゆうべ》の足の麻痺《しびれ》が思出される。で、膝頭を伸ばしたり屈《かゞ》めたりして見たが、もう何ともない。階下《した》ではまだ起きた氣色《けはひ》がない...

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