お定は其處に膝をついて

 お定は其處に膝をついて、開けた襖に[#「襖に」は底本では「襖を」]片手をかけた儘一時間許りも身動きをしなかつた。先づ明日の朝自分の爲《せ》ねばならぬ事を胸に數へたが、お八重さんが今頃|怎《どう》してる事かと、友の身が思はれる。郷里《くに》を出て以來、片時も離れなかつた友と別れて、源助にもお吉にも離...

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奧樣は、眞白な左の腕を見せて

 さて、奧樣は、眞白な左の腕を見せて、長火鉢の縁《ふち》に臂《ひぢ》を突き乍ら、お定のために明日からの日課となるべき事を細々と説くのであつた。何處の戸を一番先に開けて、何處の室の掃除は朝飯過で可いか。來客のある時の取次の仕方から、下駄靴の揃へ樣、御用聞に來る小僧等への應對の仕方まで、艶のない聲に諄々...

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三時頃になつて

 で、お吉は先づお八重、次にお定と、髮を銀杏返しに結つてくれたが、お定は、餘り前髮を大きく取つたと思つた、帶も締めて貰つた。 三時頃になつて、お八重が先づ一人源助に伴《とも》なはれて出て行つた。お定は急に淋しくなつて七福神の床の間に腰かけて、小さい胸を犇《ひし》と抱いた。眼には大きい涙が。 一時...

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